ファレル・ウィリアムス A.Iの時代に最強の消費者は最強の創造者になりうるか?

ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の逝去から空席のままだった「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズディレクターがファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)に決まったのが、今年2023年の2月のことだった。ビッグメゾンのディレクターが空席になった状況下で、ヴァージル以降に勃興したストリートブームはそろそろ下火になると騒がれたものの、2年以上経過した今、姿形を変えながらその勢いは増すばかりである。コロナによって世界中のファッションブランドがダメージを受けたが、急激に落ち込んだ売上が、特にラグジュアリーブランドにおいてV字回復を遂げたのが2022年。コロナ期間中、着々と力を蓄えたのは世界各地に拠点とネットワークを持っている企業と個人だった。人と人が対面できない以上、信用をもとにビジネスは行われたのだ。レガシーと信用で商売をするラグジュアリーのV字回復は、想像通りだったとも言える。このあたりは以前に寄稿した『ファッションとパンデミック – 終わらない世界を生きるために』の文中で触れ、新型コロナウィルスのパンデミックによって短期的に強いマイナス影響を受けるのは国際的なグローバル資本だが、その一方で大きな切り返しとともに回復をするのもグローバル資本であり、結果として大資本による業界再編とM&Aが進む可能性があるということについて言及した。2023年1月発表の決算によると、ルイ・ヴィトンの売上が200億ユーロ(約3兆円)を超え過去最高を叩き出し、LVMHもまた過去最高の時価総額に達した(注1)。結果としてベルナール・アルノーは記録上、世界一の資産家として君臨し、イーロン・マスクと並ぶ時代のアイコンとしてニュースを賑わすことになる。ちょうどこの決算が発表されたのと同時期、世間ではOpenAIによって開発されたChatGPT Plus、そしてGPT4がリリースされ、AIブームが始まった。この潮流は今、業界全体にも間接的に影響を及ぼし始めている。この頃、LVMH傘下のティファニーがナイキとのコラボレーションを発表したのも記憶に新しいが、同時期に一般人がAIを使ってコラボレーションのスニーカーのデザインをソーシャルメディアに投稿していたことを覚えている人もいるかもしれない。コロナ後のダイナミックな変化の潮流が起きる今、ヴァージル・アブロー不在から現在までの流れを振り返る。『ファレル・ウィリアムス A.Iの時代に最強の消費者は最強の創造者になりうるか?』(fashionsnap.com)